東日本大震災に関連した福島第1原子力発電所の放射性物質漏えい事故で、海外からの観光渡航者が急減し、国内各地の観光産業に深刻な影響が出ている。
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桜と東京タワー>
「観光立国」を目指した昨年の訪日外国人は、円高と沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件による日中関係悪化もあり、目標の1千万人に届かなかったものの、それでも過去最高の861万人を記録した。今年は観光庁の積極的な海外でのプロモーションにより、1,200万人を目指した矢先に、大震災に襲われたのだ。
期待の15カ国・地域全てで渡航自粛。航空便欠航も
放射能漏れの発覚以来、米国、中国、シンガポール、フランスなどが、相次いで日本への渡航自粛勧告や要請を打ち出したことから、主要な15カ国・地域の全てが日本への渡航自粛を決めており、成田空港と羽田空港発着の外国航空会社の欠航の動きが拡大しつつある。
茨城空港では、韓国・アシアナ航空のソウル便の運休が続き、国内スカイマークですら神戸、新千歳、中部便を4月3日まで運休として、空港自体が開店休業の格好だ。ただ一部ながら、運休していた中国の格安航空会社(LCC)の春秋航空が、減便はするが4月1日からの上海便の運航再開を発表し、新たな展開を見せる動きはある。
被災地以外も影響が。余震、計画停電も寄与
しかし、被災地から遠い九州や北海道でも航空便の運休が多く、外国人客のキャンセルが相当数に上っていて、回復の見通しは立っていないのが実情だ。
観光庁の溝畑長官は、
「観光が日本の成長に重要な役割を果たすことには変わりはないが、放射能漏れや余震、計画停電が続き、外国人離れを食い止めるのは難しい」
とし、今年の訪日外国人目標値を下方修正する意向だ。いずれにしても、当面の放射能汚染の鎮静化なくして、観光客は戻ってこない。
観光庁
http://www.mlit.go.jp/kankocho/