単一通貨ユーロの将来
ユーロ圏の将来を懸けた戦いの舞台が、ギリシャからスペインへ移ったことにお気づきの方も多いだろう。ユーロ圏の将来とスペイン経済の関連性が最近よく取りざたされている。
悪循環に陥ったスペイン経済
現在、スペインの経済は悪循環におちいっている。その状況を見てみると、まるでルービックキューブのように難解なのだ。一回ひねるたびに、ますます深みにはまり分からなくなる。
スペインは常々、財政赤字を減らすようにと他国から助言を受けていた。アメリカの大統領があまり乗り気ではないスペインの大統領にわざわざ電話をしたほどだ。勇気を出して緊縮財政を行うべきだという助言がなされた。
そして、その後すぐに、緊縮政策が提案される。これからの2年間で支出を150億ユーロ削減することを目標とした政策だ。この政策でスペインの赤字はGDPに対して6%にまで削減される予定だ。
計画が発表され、人々は安堵した。公務員の給料は最高で5%まで減らされる。大臣の給料は15%削減だ。さらに国の投資も大幅に削減される予定だ。この政策は有効 と見られ、今週末、IMFのドミニク・ストロスカーン専務理事が「この政策は強固であり、スペインを正しい方向へ導く」と発言した。
ヨーロッパ全体への悪影響
こうして、投資家たちはまたスペインの経済に目を向け始めた。しかし、失業率は20%越え、しかも16歳から24歳までに限定するとなんと40%だ。国の経済のほぼ4分の1は不動産分野に頼っているが、その不動産市場は崩壊してしまった。
雇用を多く生み、投資家の目を再びスペインに向けさせるためには、何が必要なのであろうか。まるでスペイン政府は自分で自分の首を絞めているようだ。
先週の金曜、信用格付け会社のフィッチレーティングスが、景気回復の目処がなかなか立たないことを理由に、スペイン国債の信用を格下げした。さらに、歳出削減のため、雇用形態に関する法律を改正する計画が持ち上がったが、政府と労働組合の意見は一致していない。
スペインの問題はヨーロッパ全体の問題となる。ここ十年の間、ユーロ圏の国々は単一通貨の恩恵を受け、人々の暮らしは驚くほど豊かになった。
もしかすると、少し行きすぎだったのかもしれない。身の丈に合った暮らしをする、という考えもこれから必要になるのだろうか。どちらにせよ、ユーロ圏に住む人々はこれから何らかの壁にぶつかるだろう。
ユーロ圏経済危機はまだ始まったばかりだ。
編集部 R.Nakao
BBC NEWS
http://www.bbc.co.uk/blogs/thereporters/gavinhewitt/2010/05/the_spanish_puzzle.html