三井住友DSアセットマネジメント株式会社は、経済イベントや市場動向に関するマーケットレポートを日々発行しており、マーケットレポート「このところの『中国リスク』をどう考える?」を12月1日(火)に発行した。
最近の『中国リスク』について考えてみる
今年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界景気は過去に例のない落ち込みとなり、いまだに多くの国が感染拡大に苦慮している中、中国はいち早く感染封じ込めに成功し、経済が正常化に向かっている。
中国株式市場は景気回復を背景に堅調な展開となり、上海総合指数の年初来上昇率が10%を超えるなど、他国の株式市場を上回っている。
一方で、中国企業に対する政府の介入や中国企業の債務増加など、中国株に対する慎重論が指摘されており、ここでは、最近の『中国リスク』について考える。
■中国企業アント・グループの上場延期
アリババ集団傘下の金融会社、アント・グループは11月3日、5日に計画していた新規株式公開(IPO)を突如延期すると発表した。アントは利用者10億人超のスマートフォン決済アプリ(アリペイ)などを手掛けるフィンテック企業で、アントの上場による調達額は過去最高となる見込みだった。
■債務不履行が増える中国企業
今年に入り、中国企業の社債の債務不履行が増加している。
元本や利息を払えなかった社債の金額は足元で累計1,570億元(約2.5兆円)となり、過去最高を上回るペースで推移している。
中国当局は年前半、新型コロナ対策として企業による元本と利息の支払いを猶予するよう銀行を指導してきましたが、景気が底入れして公的支援が弱まったことに伴い、一部企業の資金繰りが悪化した。
投資家の間には中国企業の債務が拡大していることに対して懸念を持つ見方がある。
『中国リスク』を過度に警戒する必要はないか
こうした『中国リスク』に対する慎重な見方は正しいのだろうか?アントのケースでは、急速に広がるフィンテックの分野で新たな金融リスクが高まる事態を警戒する中国当局が、国内金融システムを安定させるために規制をかけようとする意図は理解できる。
一方で、当局は、華為技術(ファーウェイ)や半導体、自動車産業などを積極的に支援しており、イノベーション企業を支える方針に変わりはないと思われる。
また、中国企業の債務不履行についても、景気が本格的に回復する中で、当局は一部社債市場の動揺が金融システム全体に波及しないようにコントロールすることが可能だと思われる。