通貨選択型ファンドの大型存在となったが……?
投資信託の総合サイト、モーニングスター社の記事で、ブラジルレアルファンドへの懸念が語られている。
記事は10月23日付けのアナリストの視点(ファンド)。この記事によれば、ブラジルレアルファンドの純資産額が3兆9735億円となり、通貨選択型ファンドの中でも大型の存在となったということだ。しかし、記事ではブラジルレアルの市場環境やリスク水準を理由に、過度にブラジルレアルファンドへ注力することには警鐘を鳴らしている。
低迷と対策
ブラジルレアルは低迷しており、2012年5月以降リーマンショック直後の水準である1レアル=38円台まで下落、9月末時点でも1レアル=38円22銭となっている。景気低迷や投機資金の引き上げを背景に、今後も下落傾向は続くと見られている。
ブラジルの景気低迷は国内需要の低迷が原因のひとつだ。内需を支えてきた南欧系の銀行の与信が欧州危機の影響で縮小してしまった。
対策としてブラジル政府は大規模な財政出動と政策金利の引き下げを行い、円に対してレアル安が進んだ。しかし、米ドルに対しては米国の量的金融緩和策からレアル高・米ドル安傾向となり、ブラジル政府はレアル安を誘導するための施策を講じる可能性についても触れている。円が米ドルに対して下落しない場合は、円高・レアル安がさらに加速する可能性もある。
IMFはどう見たのか
ここ数年間は、ブラジルの経済成長率に対する期待や高金利に注目が集まり、資金の流入が続いた。しかしブラジルの成長期待は以前と比較して低くなってしまった。IMF(国際通貨基)は2012年のブラジルの経済成長率を1.5%と予測。これは主要な新興国の中で最低で、さらには先進国の米国やカナダよりも低い水準だ。
ブラジルレアルファンドへは純資金流入傾向が続いているが、市場環境やリスク水準から考えると、個人投資家がこれ以上多額の資金を投資することへのリスク度はかなり高いといえそうだ。
記事では、
ブラジルレアルファンドの保有者は売却や他のファンドなどへ乗り換えるなどの見直しも視野に入れる必要があるだろう
と締めくくっている。
モーニングスター アナリストの視点(ファンド)
http://www.morningstar.co.jp/fund/analyst/2012/4q/MFA120121023.html