就職して2か月で自殺
大手居酒屋チェーン「ワタミフードサービス」に勤務する26歳の女性が2008年、自宅近くのマンションから飛び降り自殺した。
この事件について、神奈川労働局は14日、過労が原因として労災に認定した。
ワタミ株式会社PDFより月100時間、早朝5時まで連続1週間
自殺した森美菜さん(当時26)は、2008年4月、ワタミフードサービスに入社した。
配属された京急久里浜店では、1か月あたり100時間を超える長時間勤務や、朝5時までの勤務が1週間続くなどした。
また休日や休憩時間もレポート書きに追われ、心身ともに休まるときがなかったという。
入社から2か月後、森さんは自宅近辺のマンション屋上から飛び降り自殺した。
亡くなるおよそ1か月前に書かれた日記には、その苦しみが記されていた。
「体が痛いです。体がつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」(NHK報道より抜粋)
死ねば支払わなくていい「貸し」
同社の社長、渡邉美樹氏は労災認定について次のようにTweetしている。
労災認定の件、大変残念です。四年前のこと 昨日のことのように覚えています。
彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。
労務管理 できていなかったとの認識は、ありません。
ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています。
会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです
これほど劣悪な労働条件でも、労務管理できていなかった、という認識はないらしい。
労働に対する同氏の考え方は、これまでトーク番組や各種の記事などで読み取ることができる。
「日経スペシャル・カンブリア宮殿」では、「無理」という言葉について、こう語る。
ワタミ社長「『無理』というのはですね、嘘吐きの言葉なんです。途中で止めてしまうから無理になるんですよ」
村上龍「?」
ワタミ「途中で止めるから無理になるんです。途中で止めなければ無理じゃ無くなります」
村上龍「いやいやいや、順序としては『無理だから→途中で止めてしまう』んですよね?」
ワタミ「いえ、途中で止めてしまうから無理になるんです」
村上「?」
ワタミ「止めさせないんです。鼻血を出そうがブッ倒れようが、とにかく一週間全力でやらせる」
やらせた結果が鼻血ですめばよいが、それ以上の事態が起きる、という発想は思考から除外されているようだ。
さらに「リクナビ」では、会社の待遇に不満を訴える男性社員に対して、こう説いている。
今のあなたは、会社に貸しがある、つまりは、会社に「見えない貯金をしている」わけです。そのことを理解すべきだね。形はないけれど、この貯金はいつか必ずあなたにとって、何らかの形でプラスになって戻ってくる。今もらっている給料だけが、すべてではないんですよ。(リクナビHPより抜粋)
つまり、社員に無理な労働を強いて、会社に貸しを作らせるが、死ねば返す必要がないということかもしれない。
ブラック企業経営者の定番
渡邉氏が社員に無理を強いるのは、自身はそれくらいやって成功した、という自負があるからかもしれない。多くのブラック企業経営者に見られる思考形態だ。
ただ、多くの人材を率いる以上、肉体的、精神的にそのやり方を踏襲できない人間も社員の中に混じっていることは理解すべきだろう。
そういった弱い人間に配慮する必要はない、というのであれば、和民流についていける優秀で強靱な人間だけを社員として採用すべきだ。
ワタミフードサービスの給与で雇用できるのなら、だが。
◆ワタミ株式会社
http://www.watami.co.jp/