多くの教訓
日中両国に多大な影響とナショナリズムの高揚をもたらした尖閣諸島問題。特に日本側には「屈辱」との声が強いが、沸騰の熱もやや収まり始めた今、この問題はどのように捉えるべきであろうか。複数の人々の見解を取り上げたい。
今回は米国の週刊誌ニューズウィークから、戦略国際問題研究所・日本部長マイケル・グリーン氏の「オバマは尖閣問題で中国を戒めよ」との主張を引いてみよう。
やはり中国の勝利
最初の1文がこの記事のテーマをよく表している。
「勝利」に酔う中国を野放しにすれば、アジア各地に領土紛争が拡大しかねない
記事では尖閣諸島を日本固有の領土と認めているものの、中国当局の対応が数年前から大胆になっていることを指摘する。
それから衝突事件が起こり、外交カードが切られ、船長が釈放に至ったことを説明。今後米国はどうするべきかという論点に入っていく。
オバマ政権の対応
記事ではバイデン副大統領やクリントン国務長官らが、早々に日本を支持する表明をしたことを肯定しつつ、もっと強い対応が必要だったのではないかとオバマ政権に疑問を呈する。
特に日本人4人をスパイ容疑で拘束したことと、レアアースの禁輸処置は国際基準をはるかに逸脱していたと指摘。特に複雑になってくるのは、今回の「勝利」を期に中国国内の世論は、対日外交で今後ますます強硬論が噴出してくるであろうことだと予測する。
そして、これらは結局日本のみの問題に留まらず、インドや東南アジア諸国の安全保障にも深刻に関わってくるため、米国がより積極的にこれらの地域に関与していく必要性を強調した。
10月4日にはASEMで菅首相と温首相が会談を行ったが、両国のみならず世界にとってナーバスな状況が続くだろう。
編集部 宗近 明
ニューズウィーク:「オバマは尖閣問題で中国を戒めよ」
http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2010/09/post-1664.php